中島巾着ナスの栽培(平成27)


当然のことですが「これを伝統にするぞ」 と考えて100年も野菜を栽培し続ける百姓はいません。
伝統野菜として100年の歴史があれば、100年前から現在までの地域の食文化に適合した作物であったからこそ現在も残っているのです。伝統野菜の歴史を探るには第一に生産地域からたどっていかなくてはなりません。次に資料を探し野菜の名前を見つけるには「巾着茄子・中島巾着茄子・中島なす・丸ナス・長岡ナス・四郎丸なす・長岡巾着」のいずれかで調査が必要です。 長岡の巾着ナスの本来の名称は「中島巾着茄子」です。

梨ナスは名前は1つですが2品種あります。それらを知った上で長岡の「巾着ナス・梨ナス」を調査し、父達中島農家先輩の言質の裏付けができたのは、長岡市において「巾着ナスと梨ナス」が中島地域が栽培の始まりであったこと、土田が先祖代々中島の野菜専門の百姓だからです。
そして父親から昔の中島地域と畑作の話をよく聞かされたからこそ様々な方面から予測し、資料探しができ、解明・理解できた事が多かったわけです。農家でなくとも歴史ある旧家の言い伝えは大切な「時代の証言あり宝」です。
長岡市は明治維新の戊辰戦争で焼かれて江戸時代以前の多くの資料が焼失し、第二次世界大戦の空襲で一面焼け野原となり戊辰戦争の災禍から逃れ残っていた民間資料の多くが灰となりました。長岡における伝統野菜を調べる際に参考となる農業関係と食文化の資料を探し出すのは困難であり、その数も少数です。公的機関に所蔵されている書籍や国会図書館の電子書籍は誰でも簡単に探し出すことができますが、その内容は簡単であり、文章も僅かで詳細が不明瞭であったり、役所の担当者が記録したものが多く、印刷ミスや間違いであろうと思われるものもあります。実際に中島地区で農業に従事している者からすると信憑性に疑問が残るものが見受けられます。

江戸~昭和初期の農家や調理人などが直接書いた貴重な資料は滅多に見ることはできません。しかし、二度の戦火から逃れた貴重な農家の資料が中島地区には現存しています。それに加えて、離農した人も含めて中島農家の古老やその子孫から話を聞くとができたので、紛失したジグソーパズルのピースを埋めるように「歴史・ナスの性質・苦労」が見えてきます。地域の先人達の苦労を知ると、嘘や間違ったことを伝えてはならないと思う気持ちが生まれます。
伝統芸術・伝統芸能・伝統技術など伝統を名乗るものは先人の知識と技術を真摯にとらえ、代々それに携わってきた者が間違いなく後世に伝えています。※名前を変えたり他地域の知識のない者が誤ったことを伝えてはいけません。
「中島巾着茄子」は「本当の梨ナス」とともに貧困と苦労の中で中島の百姓が世代を継いで作り続け守ってきました。 信濃川河川敷の農地を守り種の歴史を重ね、中島の名前を冠する「伝統」になったのです。

中島の農家が活気に満ちていた40年前の中島巾着茄子(中島では丸ナスと呼ぶ)の栽培本数は多い農家で500本~600本・梨ナス(白十全系)500本~600本でした。1枚の畑の広さで植える本数が決まるので畑の場所によって少ない本数になる年もあります。畑が限られているので一枚の畑に毎年本数を決めて巾着と梨ナスを作付けする家もありました。
当時、土田家では他の野菜も多く生産しているので、ナスは最多で1000本~1200本が栽培限度数でした。これ以上のナス本数は畑の地力を失わせてしまい自根栽培を続けることが困難になるためと、同一作物での収益依存の危険性などからの長年の経験からの本数です。
中島農家で接木をしていたのは僅かでした。「接木をすると不味くなる。種が変わる。接木の手間がかかる。木と根が大きくなり過ぎて後始末に困る。」という理由で大抵の中島農家は接木をしていませんでした。そのために最低4年は同じ畑にナスは作付けできません。ですから上手に畑を回して自根栽培を続けてきました。畑の少ない人は本数を減らします。他の野菜も作付けしますので忘れないように輪作記録をつけます。
ナスの栽培のコツは「中島の先人に習う(大抵の農家は他人に教えてくれませんので父母の経験から、または中島地区の他農家を見て推察する)」です。

7代目重兵衛は平成28年現在54歳ですが、幼い頃から畑に連れて行かれました。小中学生の頃は畑のある河川敷でクワガタムシ・カブトムシを探し回っていたので、中島の各農家16軒の畑を見ていたために各農家の違いがなんとなく判りました。各農家で葉の色や樹勢、実の多少色艶などが、クワガタムシの捕れる初夏から夏休み最終日まで、日を追う毎に違ってくるのが不思議でした。家に帰ると六代目の父と母が、何故違うのかを教えてくれました。もちろん他農家の栽培については推測の回答も含まれていました。
「樹高が150センチを楽々超える元気過ぎる丸ナス(巾着ナス)の樹には実が少ない」「水気のない畑の丸ナス(巾着ナス)は色艶形が悪く、すぐに種がブツブツする(つぶてる)」など、図工と理科しかできない勉強嫌いな俺には面白い話ばかりでした。
現在、我家での中島巾着ナス栽培本数の基準は、250本~350本と決めています。この本数は毎年の種の更新と保存のための系統研究・実験の本数として、そして畑の面積と体に無理のない本数がこれです。儲けようとして本数を増やせば一番重要な収穫後の選別が蔑ろになってしまいます。栽培本数の多少に関係なく、近年この選別ができない栽培農家が増え過ぎています。長岡市とブランド協会と地域振興局が共同出版しているパンフレット写真の「長岡巾着ナス」は全て色艶が悪く種が成熟した販売に向かないものばかりでした。選別の難しさが巾着ナスの一番の難しい点であり、その選別眼を100年の歴史で培い養ってきたのは中島地区農家のみです。

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①写真左のナスは大きさと色から見ても種が成熟しているのが判る。
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②調理後の種色が茶色であり種が成熟している。3個分のナス全てが販売調理に向かない、廃棄すべき巾着ナスである。
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③上記画像同様に販売調理に向かない廃棄すべき成熟したナスである。中島地区では既に栽培していない旨の間違った文章が堂々と掲載されている。

7年前に父が病に倒れてから、7代目として自由に栽培できるようになった。 以後、化学薬品や化学肥料が導入される以前の先人達が行ってきた「できるだけ自然と体に無理のない栽培方法」を7年間行ってきた結果の本数が350本である。俺は除草剤を使用しただけで体がだるくなったり、農薬を散布した翌日は朝起きるのがつらくなる農薬アレルギーです。春秋の花粉症と、桃・キウイフルーツなどの食物アレルギーもあります。それだけでなく、安部総理と同じ潰瘍性大腸炎(大腸のアトピーのような治らない病)という難病であり、総理よりも症状が重いため、できるだけ安心安全な野菜を作りたいという理由から無理のない栽培本数が最多で350本になりました。だから儲かりません。ネットなどで「本物の伝統が中島巾着茄子」 であることも宣伝してこなかったので本当の価値を認めてくれる人もわずかです。
でも、このアレルギー体質と先人の残してくれた知識と資料のおかげで意外な栽培方法が生まれました。

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有形文化財の中島浄水塔が見える畑で中島巾着茄子の植付け。2015.5.27低温に弱い晩生品種なので昔から土田家は5月末~の本圃出しにする。100年の経験である。
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梨ナス畑。忙しい夏の我家、妻の次に良く働いてくれる草刈機。草丈40cmの草。雑草との闘いより「共生」を選ぶことのほうが畑にも茄子にも人間にも良い結果となる。
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鵜呑みにせず、あくまで参考にして実際に実験検証して確かめ自身に生かせるところだけを取り入れることが農業の面白さ。人間も自然の一部分。人間も野菜も本来の性質を知り伸ばす。虐めるとイジケてしまいます。

除草剤は植え付け直後に黒マルチの両脇の畝間土15センチ幅程度に「雑草抑制」に1回散布する。これは草刈機で黒マルチを破りたくないため。または散布しない。あえて雑草を生やしてしまう。植え付け直後からカラスが畑を見ており悪戯をしますが、雑草が生えるとカラスは畑に降りてきません。そして一番実が着実する頃になると草で日陰になるため40cm程度になったら1回目の草刈り。この時までに釣り糸を張る。
テレビやマスコミに取り上げられる古正寺の「長岡巾着ナス(以前は四郎丸ナスとして出荷していた)」生産農家の小林さんの長岡巾着は、JAグループ機関紙の取材記事によると花落ち実落ちをするらしいが、我家では全てのナスの木がホルモン処理することなく、全ての1番花が自然着果し花落ちも実落ちもありませんし、栽培終盤まで同様です。
1番果に関係なく、花落ちと実落ちの原因を、原種だから…と理由にしていますが、原種との因果関係はまったくありません。●長岡の全ての巾着ナスは中島から広まった在来種です●近年、間違いを指摘されて「原種に近い」と表現を変えています。

草刈をする時は地上3~5cm程度を残すのがコツ。OLYMPUS DIGITAL CAMERA

刈取り途中の梨ナス畑。10日~14日に一度の草刈を行う。中島巾着への交雑を防ぐために梨ナスは信濃川の対岸に栽培している。

草刈で地上数センチ刈り残す利点その1
こうするとカラスが畝間にあまり降りて来ないのです。刈り残した草が足裏に刺さる感覚が嫌いなのでしょうか…。そして畝(黒マルチのところ)に刺した直径6mm長さ180cmのグラスファイバーの棒に3号~5号程度の釣り糸を結び畝の端から端まで渡すと、グラスファイバー棒が風に揺れて頭の良いカラスにも予測不能な不規則な動きを釣り糸がするので、ピンと張った釣り糸と違って不安を感じるのか河川敷のカラスは寄ってきません。しかし、キジには効き目なし。
6年前までは絶対に揺れない園芸棒を使用して釣り糸をピンと張っていましたが、釣り糸の間からカラスが畑に舞い降りてナスを食べてました。グラスファイバーにしてから被害は格段に減りました。 釣り糸は透明で細い方が、太い釣り糸や色付きのものより効果が高いことがわかりました。透明でも太いのはカラスの目には良く見えるので、糸の間隔や動きを予測して進入するのでしょうが、細い糸や不規則な動きは不安を煽るのではないかと思います。頭の良い生き物は不安があると警戒して近寄らないのは人間も同じです。
隣の畝と糸の高さを変えて高低差をつけることで横方向からの進入防止に格段に効果が上がります…10年以上前に妻がカラスの進入経路を観察して判った。
畝の両サイドの糸はカラスの目線程度にする…キジには効果なし。

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百姓の天敵カラスは悩みのタネ。カラスを虐めたり殺したりすると顔を覚えられて仲間からも仕返しされます。気をつけましょう。釣り糸に絡んだカラスを逃がしたら、その後3年以上付け狙われましたが、一緒にいる妻は狙われませんでした。
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画像を大きくして見ると、釣り糸が見えます。糸が常に不規則に揺れ、糸の高さがそれぞれ違うことがポイント。 中島巾着茄子の畑。 前出画像②のパンフレットのナス畑の葉色樹勢と比較してほしい…違いが歴然である。
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収穫後のトウモロコシ畑(自家消費用の冷凍コーン)。青いのは防風ネットを1メートルにカットしてタヌキ・キジの侵入防止。上部には釣り糸が数本張ってある。防止措置をしないとタヌキもカラスも実が付かないうちに甘い茎を倒してかじってしまう。

その2
地中には植物に対する病原菌が多数生息しているので、雨による土の跳ね上がりで病原菌が付着して病気が発生する場合が多いです。刈った草と刈り残した草が空間を作り、シートの役目をするので雨による土跳ねを抑えてくれるのです。
その3
近年の異常な猛暑は、除草剤を撒いて草がない土がきれいに出ている畑は直射日光で土中の水分が見る見る蒸発していき、土をひび割れさせていきます。刈った草があることで直射日光を遮り土中の水分蒸発を抑えてくれるのです。ナスにとっても他の植物にとっても水分は重要で、光合成による同化作用の必須条件であり土壌水分の量は糖分などを含む味そのものを左右します。巾着ナスは他のナス同様に水分が必要です。★「巾着ナスは水を一切与えない。巾着ナスは水分を控える」などと言っている農家は無知か、嘘つきとしか言いようがありません。中島農家は河川敷の畑であっても水不足を嘆いていました。ですから土田家では大型タンクで灌水します。トマトとナスを同じに考えてはいけません。水分を必要とする植物(巾着ナス)が水分不足を感知すると子孫を残す本能が早く働いて小さい実のうちに種が成熟してしまいます。同時に生理障害として形が悪くなり実が硬く不味い石ナスになるうえに、木も弱り病気に弱くなますし長期収穫の妨げになるばかりか、色艶の悪いボケナスになります。(証拠写真は別の機会にします)巾着ナスは十分に水分を与えなければいけません。

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畝間一本につき300リッター2台と1000リッター1台を潅水。
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明治期からの典型的「中島巾着」この形と色艶!!これが歴史をつくり守ってきた嘘偽りのない中島農家の真髄である。

その4
農薬も除草剤も少なからず、害虫や有益昆虫を殺します。除草剤にしても有益菌やミミズなどの有益動物に害をもたらしているはずです。我家の畑と隣の農家の畑ではその違いが出ています。いずれ時期をみて書き込みます。畑にバッタやミミズが多くいる畑は健康な畑。
その5
草刈機を入れるために畝間を2メートル~2.5メートルと広くしました。結果的に風通しが良くなり病気の発生率が格段に減少しました。したがって農薬使用回数も減り、2014年の防除は害虫病気合わせてゼロ。 2015年の防除は害虫1回、うどん粉病2回のみです。何事も風通しの良い場所は健全です。畑でも役所でも何処でも風通しの悪い場所は性質(たち)の悪いのが蔓延して機能不全を引き起こします。
その6
難病でいつも大腸粘膜が荒れている俺が食べても安心な野菜は誰が食べても安心なのです。
その7
刈った草を畑の外に出さずに還元するので、草が吸い取った肥料ごと畑に還元できる。通路として踏み固められる畝間を、草の根が僅かながらだが土中に空気層を作り出してくれる。

畝間を広くし草刈のみにしするマイナス面
その1
畝間が広いので収穫は片畝ずつになる。
その2
頻繁に草刈機を入れなければならないので時間と労力が取られる。
その3
栽培本数が制限されるので面積当たり利益率が減る。
その4
俺も妻も気にしないが、他の農家や散歩の人が「草だらけの荒れた畑、怠け者の畑」として見ているような気がする。
その5
朝の収穫は、草に降りた朝露が地下足袋に付いてしまうので足元がびしょ濡れになってしまう。  しかし、この朝露が地中に伝うと夏場は乾燥を防ぐ役目になる。

つづく